close

Pharmaceuticals

Pharmaceuticals focuses on prescription drugs for the therapeutic areas of cardiology, oncology, gynecology, hematology & ophthalmology.

Global Site

Consumer Health

Consumer Health brings consumers some of the world's best-known and most trusted over-the-counter (OTC) medications, nutritional supplements and other self-care products.

Global Site

Crop Science

Crop Science has businesses in seeds, crop protection and non-agricultural pest control.

Global Site

Animal Health

Animal Health is passionate about the health of animals.We support vets, farmers and pet-owners that care for them with innovative therapies and solutions.

Global Site

バイエル薬品 大動物シンポジウム 2012
小久江 栄一 先生

耐性菌を減らすには

東京農工大学 名誉教授 小久江 栄一 先生

抗菌薬を使わなければ耐性菌は出来ないのは確からしいが、獣医臨床で抗菌薬を使わないわけにはいかない。そこで、治療レベルを下げることなく抗菌薬の使用頻度と使用量を減らすにはどのようにしたら良いかを考えた。

耐性菌の発現リスクを減らすためのMSW理論


MSW(mutant selection window:耐性菌選抜域)理論図

耐性菌は抗菌薬があるから生き残れる。これを耐性菌選抜という。耐性菌選抜を防ぐためにはということで、“適正使用”とか“慎重使用”とかいろいろな標語が飛び交っているが、具体性がない。2003年に公表されたMSW(mutant selection window:耐性菌選抜域)理論は耐性菌選抜を具体的に数値化した新しい考え方である。この理論では、MIC(最小発育阻止濃度)とは別に、MPC(耐性変異株抑制濃度)という新しい抗菌活性パラメーターを提案した。MICは感受性の高い菌の増殖を阻止する濃度、MPCは感受性が低い菌の増殖を阻止する濃度として、MPCとMICの差がMSWである。
 感染症は限定された部位に同種の菌が大量増殖する状態であるが、同種の菌といっても個々の菌には少しずつ感受性が違うはずである。そうした菌群にMSWの"ある濃度"で抗菌薬を暴露すれば、感受性菌の高い菌が除去され、その分感受性の低い菌が増殖する場合が起こる。そうしたことを何回か繰り返せば感受性の低い菌集団が形成され、やがては高度耐性菌の出現となろう。これを防ぐには、初回からMSWを超えたMPC以上の濃度で生体内の菌群を暴露して感受性の低い菌を除去する必要がある。これがMSW理論の骨子である。治療用量でMPCを超える抗菌薬が理想的ということになる。こうして「大量投与・短期間治療」の理念が生まれた。ただし薬物残留の問題があるから、承認用量を守りながら使用しなければならない。

感染症は早期発見・早期治療、抗菌薬は性質に合わせて効率よく使う


時間依存型と濃度依存型
組織浸透性と分布容
眼瞼部の体表温度変化

薬物療法に、体内動態学(PK)と薬力学(PD)を融合させたPK/PDモデル解折理論が導入された。この理論では薬の体内動態と薬理作用を組み合わせてモデルを作り、発現する薬効の経時変化を定量的に予測する。抗菌薬療法の場合は、MICをベースとし、Cmax(最高血漿中薬物濃度)、AUC(血漿中薬物濃度時間曲線下面積)などの動態パラメーターを組み合わせる解析方法が採用されている。この解析法が一般化し、抗菌薬は濃度依存型と時間依存型に分類されるようになった。抗菌薬に使用法が従来とは変わり、濃度依存型は投与後の血中濃度が一気に高くなるように、時間依存型は血中濃度を絶えずMIC以上に維持する使用法になった。その結果、濃度依存型抗菌薬は静注や筋注製剤が多くなり、時間依存型抗菌薬は一度の注射で数日間、MIC以上の血中濃度が維持される注射製剤が開発されるようになった。抗菌薬それぞれの性格に合わせた、効率の良い使用法を選択することが重要である。

 早期に感染症を見つけて治療をすれば、治癒も早い。感染初期には炎症反応が盛んで、細菌増殖部位の血流が多くなるため、どんな抗菌薬でも感染部位に分布できる。しかし感染症の発見が遅れれば、組織浸透性の良い抗菌薬しか分布できず、細菌増殖部位まで届く抗菌薬は限られてしまう。同じ抗菌薬ばかり使えば耐性菌が発現しやすくなる。逆に使える抗菌薬の種類が多ければ、選択の幅が拡がり耐性菌発現の機会を減らすことが出来る。早期発見・早期治療は重要な耐性菌対策だといえる。
 実際に早期発見のための方法が海外で進んでいる。注目すべきは、アメリカ・ノースカロライナ州立大学シェーファー先生による牛の呼吸器疾患の研究である。これは眼瞼部の体表温度と直腸温の相関関係に着目し、前者を赤外線カメラで測定することで、臨床症状が出る数日前に発熱=感染を発見できるというものである。まだモデルケースだというが、大変興味深い試みである。

抗炎症薬を併用し、抗菌薬は必要性に応じて使う


疾病発生時に熱を下げるべきでない?
乳牛の疼痛管理にNSAIDs(英国ノッチンガム大学獣医学部)

 病気などで出荷頭数が減ると、生産者は飼育頭数を増やす傾向がある。しかし、病気の原因の大半は飼養管理の悪さである。ワクチンの正しい接種やもろもろの衛生管理法も含めて、飼育頭数は十分な飼育管理が可能な頭数に制限するべきであろう。畜産経営の姿勢を一考して欲しい。

 感染症が発生すると発熱が起る。発熱は生体防御機構ではあるが、放置すれば動物の体力は減退する。増体への影響は大きい。また、感染症には疼痛が伴う。疼痛ストレス時には副腎からコルチゾールが分泌し、これが免疫能を低下させ疾病治癒を遅くらせる。感染症時に抗菌薬とともに抗炎症薬(NSAID)を適切に併用すれば、解熱・鎮痛作用による体力低下は防がれ疾病治癒は早まる。これにより抗菌薬の使用量を減らすことができる。最近ではNSAIDのジェネリックが開発され、費用対効果も高くなった。積極的に活用していただきたい。

 疾病が細菌感染によるか否かの確認は必要である。抗菌薬は解熱剤でも下痢止めでもない。抗菌薬は細菌感染症時に細菌増殖を抑えるために使うものである。例えば下痢が出たとき、on farmでの診断にグラム染色が適している。細菌が原因の下痢なら染色像は"真っ赤"になる。こうしたときは抗菌薬が下痢に有効である、染色像が"赤青とりどり"だったら細菌の関与はない。こんな場合は消化不良かストレスだと診断して、生菌剤や下痢止め薬で整腸すればよい。生産者の前で検査結果を示すことができ、費用も1検体3分30円程度と安価である。
 下痢にかぎらず疾病の原因が細菌増殖のためかは絶えず意識して治療法を選択してほしい。無用な抗菌薬の使用を止めれば耐性菌の発現を減らせる。

ポイント

  • 耐性菌を作らないためには、治療用量でMPCを超える抗菌薬を使うのが理想である。
  • 抗菌薬は濃度依存型と時間依存型に分かれており、それぞれの性格に合った使用法をとることが大切。
  • 感染症の早期発見・早期治療も、重要な耐性菌対策となる。
  • 解熱・鎮痛は病態からの回復を早めるので、抗菌薬と抗炎症薬の併用は積極的に活用するべきである。
  • 効率のいい使い方に努めることで、抗菌薬の使用を減らすことは可能である。
Top