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バイエル薬品 大動物シンポジウム 2012
平 健介 先生

牛のコクシジウム病の臨床実務における検査法

麻布大学 獣医学部 獣医学科 寄生虫学研究室 平 健介 先生

近年、最も多い牛の消化器病はコクシジウム病であり、糞便検査が不可欠


牛コクシジウムの病原性による区分

子牛の群飼を始めて間もなくすると、よく下痢便がみられるようになるが、この時に糞便検査をすると、Eimeria属原虫のオーシストがしばしば検出される。牛のコクシジウムEimeria spp.は、牛に下痢を起こす原虫で、13種類があり、特に病原性の強いものがE. zuerniiE. bovisの2種である。これらは小腸から大腸にかけて広く寄生し、重度寄生の場合には牛は鮮血便を排泄し、放置すれば死亡する。牛が感染してからオーシストが糞便とともに排泄されるまでの期間(プレパテントピリオド)は、E. zuerniiの場合15~17日、E. bovisの場合18~20日である。コクシジウム病の発症は、未感染牛にオーシストを単回投与した実験感染モデル等では、発症の時期とオーシストが排泄され始める時期はずれてくる(発症時にオーシストが検出されない)が、野外における自然感染例では、概ね発症したら糞便中にオーシストが検出される。

 牛コクシジウム病の発症は、主に1年齢以下の子牛にみられる。症状の程度はおおむねOPG(oocysts per gram of feces: 糞便1g当たりのオーシスト数)に比例し、水様下痢便や血便等では高いOPG値が認められることが多い。また、日本における本病の主役は、病原性の強いE.bovisE.zuerniiの2種である。海外の放牧牛では、E. alabamensisの感染でも重症例がみられる。その他のEimeria種の病原性は軽~中等度である。牛のEimeria属原虫は、数種類が混合感染している場合がほとんどであり、また、コクシジウムオーシストの排泄は、健常牛においても普通にみられることから、牛コクシジウム病の糞便検査においては、OPG値を測定することとEimeria種を鑑別することが重要である。
 なお、前述したように、発症してもオーシストが検出されないことがあることは、留意しておくべきである。特に、野外では生後間もない子牛に、オーシストの排泄を伴わない血便がみられることがある。

Oリング法:より安く簡単に出来る定量的糞便検査法


牛のコクシジウム病において、治療・予防効果の判定には、定量値であるOPG値の推移を調べることが重要である。しかし、時間や手間や費用の問題から、投薬後のオーシスト検査はあまり行われていないのが現実ではないだろうか。臨床現場において、比較的短時間で簡単に行える定量的検査法は、マックマスター法やOリング法であろう。後者では、マックマスター計算盤の代りにゴム製の工業用Oリングとスライドガラスで作成したOリングスライドが用いられ、安価なうえ、繰返し煮沸消毒に耐える利点がある。以下にOリング法を紹介する。

検査の流れ


マックマスター計算盤とOリングスライド
Oリングスライドの作り方
検査道具(左上の写真が糞秤量リング:底付きは下痢便用)
下痢便の準客観的判別法
検査材料の作製法

[STEP1] Oリングスライドの製作

 平地(例えばシャーレの底など)に糊を塗り、その上にOリングゴムを乗せ、Oリングゴムの片面に糊をつける。糊をつけたOリングをピンセット等でシャーレに2つ置き、軽く圧着して接着させる。簡単に制作できるので、作りおきが可能である。

[STEP2] 糞便の採材

 寄生虫卵の検査では、直腸便を用いるのが基本である。糞便材料を入れる容器は、中がよく見え、手で触って糞便の色や硬さ、異物の有無が確認できる透明なポリ袋が適している。

[STEP3] 検査道具

 糞評量リング(糞便1.1g採取できる)、60ml用のガラス遠心管とメッシュ金網があると便利である。ガラス遠心管とメッシュ金網の代替として、プリンカップ(55mlの目盛をつける)と茶こしでよい。

[STEP4] 糞便の固さの準客観的判断

 有形便:糞便1.1gを糞秤量リングに取り、水に浸してリングを回転させた際にリングから糞便が落ちないもの。
軟便:有形便と同様の操作を行い、糞がリングから簡単に落ちるもの。
下痢便:糞が柔らかすぎて、糞秤量リングに取れないもので、採糞ポリ袋を傾けても糞がなかなか落ちてこないもの。
水様下痢便:下痢便同様の操作の際、糞便(糞液)が即座に落ちてくるもの。

[STEP5] 糞便材料の作製

 糞便材料1.1gを、メッシュ網を入れた60ml用の遠心管にて濾し55mlの糞液を作成する。よく攪拌して5mlを小試験管にとり、残りの50mlと分ければ、ちょうど糞便は0.1gと1gに分離される。小試験管に取った5ml糞液を遠心分離し、上清を捨てる。これに、1.7mlの浮遊液を加え1.8mlの糞便懸濁液にする。
 浮遊液は、水1mlに対して食塩約400gを入れた飽和食塩水(比重は1.20)でよい。飽和食塩水の糞便懸濁液をよく攪拌してすばやくOリングの内側に注入し、10秒以内にカバーグラスをかける。倍率100倍で鏡検する。2つのOリングチャンバーから検出された虫卵数の和を100倍したものがOPG値となる。つまり検出限界OPG値は100となる。

OPG値の計算
牛に寄生するEimeria13種のオーシストの形態的特徴(Levine and lvens 1970)

まず、総OPG値を全部数え、次にオーシストの形態的特徴により簡易鑑別を行う。より正確な鑑別が必要な場合は、成熟オーシストを用いて鑑別を行うが、臨床現場では未成熟オーシストの形態による簡易鑑別で十分であると思う。コクシジウム種の簡易鑑別後、その構成比から種類別のOPG値を調査する。大事なのはE.zuerniiE.bovisの2種類を確認することである。それ以外は、「その他の種」として一括してもほとんど問題ない。OPG値を調べて記録に残せば、術者や検査場所が違ってもデータの比較が可能となる。
 糞便検査は、基本的には新鮮材を使ってなるべく早く行うことが望ましい。しかし、牛コクシジウム病における糞便検査では、糞便を5%のホルマリン糞液としてを10℃以下で冷蔵保存すれば、1年後でもOPG値は変化せず、上述したOリング法等の糞便検査が可能であることが分かっている。検体を長期保存すれば、時間を選ばずに検査ができるし、再検査や外部への検査依頼も可能である。

 牛コクシジウム病の治療・予防効果の判定には、OPG値の推移を調べることが重要である。また、本病の予防対策の検討、発症要因の解明のためには、現場の先生方の観察力と検査データの蓄積が必要と思う。

ポイント

  • 牛コクシジウム病の治療・予防効果の判定には、定量値であるOPG値の推移を調べることが重要。
  • Oリング法による検査は、短時間・安価・簡易にオーシストの定量検査が行えるので、臨床現場では適していると思われる。
  • OPG値を調べて記録に残すことで、術者や検査場所が違ってもデータの比較が出来る。
  • 糞便検体をホルマリン固定して長期保存することで、後日の検査や事後の検証、他検査機関への依頼が可能になる。

牛コクシジウム病の予防対策の検討・確立、発症要因の解明のためには、現場での観察力と検査データの蓄積が必要である。

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