close

Pharmaceuticals

Pharmaceuticals focuses on prescription drugs for the therapeutic areas of cardiology, oncology, gynecology, hematology & ophthalmology.

Global Site

Consumer Health

Consumer Health brings consumers some of the world's best-known and most trusted over-the-counter (OTC) medications, nutritional supplements and other self-care products.

Global Site

Crop Science

Crop Science has businesses in seeds, crop protection and non-agricultural pest control.

Global Site

Animal Health

Animal Health is passionate about the health of animals.We support vets, farmers and pet-owners that care for them with innovative therapies and solutions.

Global Site

バイエル薬品 大動物シンポジウム 2014
大動物シンポジウム 2014

牛呼吸器病を考える~適切・的確な抗生物質療法を目指して~

酪農学園大学 獣医学群 獣医学類 生産動物医療分野 教授 鈴木 一由 先生

まずは肺炎の種類を大別し、治療を始めていくのが原則


スライド1:呼吸器疾患の診断ストラテジー
スライド1:呼吸器疾患の診断ストラテジー スライド2:治療方針の決定

 肺炎の臨床診断において特に注意が必要なのは、実質性肺炎か、間質性肺炎か、あるいは誤嚥性肺炎かの識別である。実質性肺炎の場合には、呼吸困難に陥るため、呼吸をしようと頸部を伸ばして舌を突出させる。それに対し、間質性肺炎は、呼気の流通は確保されているが、発熱等全身症状が悪くなるため首を下垂させる。

 重症度は、一般検査と同じく、脱水のレベル、血圧、意識レベルで判断できる。呼吸器疾患は、発熱で代謝が上がり、呼気として多くの水蒸気を排出するため、水分が失われて脱水を呈し、循環血液量の減少に伴って血圧が低下し、その結果として低酸素状態になる。そのため意識状態を含めてチェックをしていくことが重要である。これらの身体検査の合間に可能ならば病原菌検査を行う。これらを含めて、初期治療であり、方針が決定していなくても治療を始めるのが原則である。(スライド1、2)

抗生物質の選択には胸部単純レントゲン像や超音波像が有用


スライド3
スライド3 スライド4

 細菌性肺炎の主な罹患部位は左右前葉であるため、レントゲン像では心臓の前影部に陰影像がみられる。気管分岐部に境界不明な斑状影が多く出ていれば、線維化の現象が強く起こっているために細菌性の肺炎だと言える。

 マイコプラズマを中心とした乾酪性肺炎もレントゲンでおおよそ診断が可能である。線維化が始まり、エアーブロンコグラムなど多彩な陰影像が診られる場合には乾酪性肺炎と診断できる。胸腔内の60%以上で陰影像が占めると線維化領域が60%以上の重篤症例と分かる。(スライド3)

 レントゲン撮影が困難であれば、超音波で診断をすることもできる。超音波診断の場合、超音波が空気中で散乱するので、肺が含気をしていれば漿膜面の多重反射が起こる。肺にスライド4のようなコメットサインがみられると、気管内に膿が入っている状態なので実質性肺炎、すなわち細菌性肺炎だと分かり、そこから抗生物質の選択ができる。

 肺の線維化した部分に、腐った卵のような形で結節状のものがみられれば、マイコプラズマが優勢の肺炎、つまり乾酪性肺炎だと判別できる。仮診断でもこれだけの情報があれば、どの抗生物質を適応すべきか予測がつく。

細菌性肺炎と誤嚥性肺炎は、聴診で識別できる


スライド5:誤嚥性肺炎の好発部位
スライド6:聴診所見の比較1
スライド7:誤嚥性肺炎と細菌性肺炎

誤嚥性肺炎は飼料、ミルク、薬液など異物の誤嚥によって起こる肺の炎症を総称したものだが、 病態はカタル性・線維素性肺炎から肺壊疽に進行し、予後不良となることが多い。炎症が強く生じるので抗生物質療法よりも抗炎症療法が優先される。抗生物質は二次感染の予防として広域のものを選択する。

 解剖学的理由から、ヒトでは右下葉に好発するが、牛の場合は右中葉と左前葉後部が好発部位となる。線維化はこれらの葉に限局しているため、線維化が前葉から中葉(左葉の前葉後部)にかけて広域に生じる細菌性肺炎とは明らかに異なる。(スライド5)

 聴診所見を比較してみる。誤嚥性肺炎は、気管分岐部の直後に開口している葉気管支(右中葉、右副葉、左前葉)に流動物が流れ落ち、その結果として心臓の後縁に強い炎症がみられる。つまり、第5および6肋間に相当するため、この部位で最も複雑音が聴取できる。これに対して細菌性肺炎は心臓の前縁、つまり第3肋骨の前から心臓の後縁、すなわち第6肋骨付近まで線維化が病態に伴って進行する。以上をまとめると、誤嚥性肺炎では、第5~7肋間、心臓の後縁で断続性ラ音が聴取され、細菌性肺炎では前葉から右中葉(作用では前葉前部)の広域な領域で異常呼吸音およびラ音が聴診できる。これらを踏まえれば、誤嚥性肺炎と細菌性肺炎は聴診で判別できる。(スライド6、7)

感受性の高い抗生物質が良い薬剤なわけではない


スライド8:感受性試験のpit fall
スライド8:感受性試験のpit fall スライド9:耐性菌出現阻止濃度(MPC)と最小発育阻止濃度(MIC)の関係
スライド8:感受性試験のpit fall スライド9:耐性菌出現阻止濃度(MPC)と最小発育阻止濃度(MIC)の関係 スライド10:耐性菌出現阻止濃度(MPC)に基づいた血中最高濃度(Cmax)の設定

 薬剤感受性試験でS(Sensitive)、I(Intermediate)およびR(Resistant)の判定にはどのような意義があるのか。感受性試験は、抗菌薬の選択においては有効な情報を提供できる。その抗菌薬がSであれば、感受性試験で用いられた濃度で治療が可能である。しかし、これはあくまでも細菌学的ブレークポイントであり、in vitroでの検査結果である。ではin vivoではどうか。臨床学的ブレークポイントは、DDS (Drug Delivery System)=いかに生体内のターゲットに抗菌薬が届くかに依存している。これは生体の病態生理学的反応や組織親和性によって異なるため、ターゲット臓器に到達しやすい抗菌薬はIでもSになりうるし、逆に組織浸透性の低い抗生物質であればSもI、またはRになりうる。すなわち感受性試験は薬物動態を考慮していないので、感受性試験だけを中心に考えないほうがいい。(スライド8)

 フルオロキノロン薬の1回大量投与は理論的には耐性菌の発生リスクを限りなく0に近づける。ではなぜ出現するのか。それは野外にフルオロキノロン耐性遺伝子を持った菌が自然発生的に存在することを考慮せず、少量のフルオロキノロンを使用したことで耐性株だけがセレクションされたことに起因する。つまりMICレベル、MSW(Mutant Selection Window、耐性菌選択濃度領域)にとどまる投薬量で使用したことが、耐性菌の残存の原因になっている。それを防ぐためにMPC(Mutant Prevention Concentration、耐性菌出現阻止濃度)を超える濃度の投薬、いわゆる耐性変異株までも殺菌可能なレベルでの投与が推奨される。(スライド9、10)

PAEを長く持続させるためにも、一度に高濃度の投与を


スライド11:Post Antibiotic Effect(PAE)
スライド12:PAEと抗菌薬の関係

高用量を推奨するのは、PAE(Post Antibiotic Effect)=ある抗菌薬が微生物に短時間接触したあとに持続してみられる増殖抑制効果(スライド11)にも関係する。MIC以上の濃度にさらされた白血球は、抗菌薬濃度がMIC以下になっても、しばらくの間、自身で抗菌作用を発揮するからである。

 PAEは、濃度依存性の抗生物質か、時間依存性のロングアクティブのものにしかない。つまりペニシリンやβラクタム系など短時間の時間依存性のものにはない。βラクタムを使っても治療がうまくいかないケースに対し、長時間持続するテトラサイクリン系や濃度依存性のキノロン系、アミノグリコシド系を使用するのであれば、高濃度1回投与によりPAEが持続し、時間的にも効果がある。(スライド12)

エンロフロキサシンは適切な用法用量で十分な抗菌作用を示す


スライド13:細菌数の経時的変化
スライド14:臨床症状を伴わないPasteurella multocida 上部気道感染子牛におけるバイトリルのPK/PDパラメータ

 臨床的に健常なPasteurella multocida (PA)の上部気道感染症子牛に対して、エンロフロキサシンのPK/PDパラメーターの算出を試みた論文が北欧で出ている。この文献(Acta Vet Scand., 2008. 50:36)を引用しながら、エンロフロキサシンの用法用量について考えてみたい。

 ここでは5mg/kgのエンロフロキサシン=バイトリルの最高用量を4日間連続で筋肉内投与し、PAの分離状況、AUC、Cmaxおよび分離されたPAのMICを求めた。結果、PAのCFUは投与開始後12時間目に激減し、24時間目には分離することができなかった。4日間連続投与した後、1症例で初回投与後6日目にActinobacterium pyogenes が分離されたが、その他の試験牛からは肺炎起因菌は分離されていない。つまりは、十分な抗菌作用を示すことが確認できた。(スライド13)

 彼らが分離したPAのMICは≦0.015μg/mLであったが、一般的には≦0.06μg/mLを採用することが多い。そこで、両者に対するPK/PDパラメーターを求めたところ、いずれのMICを採用したとしてもPK/PDパラメーターのターゲット値は担保しているので、5mg/kgの筋肉内投与は理にかなっていると言える。(スライド14)

一時的な効果だけを求めない戦略的な治療を


スライド15

 牛や馬はヒトや犬よりも肺胞マクロファージが多いため、何らかの炎症が誘起されると、肺に症状が生じやすい。敗血症、誤嚥、輸血などで炎症が強く起こると、肺のマクロファージが活性化し、活性酸素や炎症性メディエータなどを放出してしまうため、直接的肺傷害を起こす。これが気管や絨毛細胞をボロボロにする最大の原因である。また、間接的にはサイトカインが出てくるため、肺の透過性が亢進し、肺がグズグズの状態になる。

 こういったALI(急性肺傷害)は、強い抗生物質でも起こりうる。その最たるものがペニシリン系である。一時的に菌はいなくなるが、数日すれば肺炎が繰り返されるのは、ALIが起こっているからである。それを防ぐためには、静菌剤と殺菌剤、マクロライド系とフルオロキノロン系のコンビネーションで治療するべきである。 キレのいい薬は決していい薬ではない。3日で治したつもりになってもALIを作ってしまっては意味がない。また、MICが低いからいいわけではない。抗生物質は全て病態に対して診断していくことで選択が決まってくる。薬物動態のことも考え、ぜひ的確な抗生物質の選択をしていただきたい。

ポイント

  • 肺炎の種類を大別したら、方針が決定していなくても治療を始めるのが原則。
  • レントゲンや超音波による仮診断でも、抗生物質選択の予測がつく。
  • MICにとらわれず、フルオロキノロン薬は高用量を単回投与し、耐性変異株をも殺菌するべきである。高用量であれば、PAEも長く保て、効果を持続させられる。
  • 抗菌薬は、それぞれの特徴を理解して、PK/PD理論に基づいた適正使用を心がけること。
  • ALIを防ぐためにも、一時的な効果だけを求めず、薬物動態のことも考え、的確な抗生物質を選択することが大切。
Top