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バイエル薬品 大動物シンポジウム 2014
バイエル薬品 大動物シンポジウム 2014

乳房の健康管理と乳房炎コントロール

イタリア ミラノ大学 獣医衛生学研究室 教授 Alfonso Zecconi 先生

産次数が多ければ多いほど、潜在性の乳房炎が増えていく


スライド1:陽性分房 調査結果
スライド2:潜在性乳房炎 調査結果
スライド3:臨床型乳房炎 調査結果

 ミラノ大学で、私は感染症制御の研究をしており、その一環として本日は牛乳房炎の調査結果を紹介する。16万の分房において乳房炎の調査を実施したところ、25%以上が病理学的に陽性を示した。分離された細菌としては40%がCNS(コアグラーゼ陰性ブドウ球菌)、25%が環境性レンサ球菌、黄色ブドウ球菌を含めると約30%であった。14~15%が伝染性、そして大腸菌群が8%ほどであった(スライド1)。潜在性乳房炎については30%ほどが環境性レンサ球菌で、10%弱が大腸菌群。伝染性が増え、約21%になる(スライド2)。臨床型乳房炎になると、25%が環境性レンサ球菌、そして25%が大腸菌群。その一方臨床型でも30%が陰性を示している(スライド3)。以上がイタリアの調査結果だが、日本でも同様の状況ではないかと推察される。

 イタリアも他国と同じように、牛は群飼されている。搾乳量から鑑みて、イタリアでは3回分娩させなければ実益が出ない。なるべく長期間、健康を保ち、分娩回数を増やしていくことが大切。産次が増えると、より細菌に曝露される確率が上がり、感染する割合が高まる。特に潜在性の乳房炎が増えていく傾向にある。

乳房炎にかかる費用こそ、酪農家に伝えるべき主要な問題


スライド4:体細胞数とチーズ生産量
スライド5:慢性乳房炎牛の皮質における血管像
スライド6:乳房炎の程度による動物の前卵胞腔の配分比較

 初産牛と3産牛を比較すると、初産牛の方が搾乳量は少なく、乾乳期に入る直前は乳量が減少する。この時期に不搾乳の危険性が上昇し、乳頭表皮に損傷を与えて感染する恐れが高まる。初産牛の場合には、正しく搾乳が出来ないために感染、発症するケースが多いので、その点をしっかり管理することが今後のためにも重要となる。

 乳房炎において重要な側面は、コストの問題。酪農家は目先の経費のことを心配するが、最終的に獣医師の正しい診断と治療によって損失を抑えることができる、獣医師は酪農家に対し、治療は最終的に利益につなげられることを理解させる必要がある。国によって乳価は様々だが、コストの原因は変わらない。産乳量が減少し、乳質が低下し、受胎率が低下することで収入が減る。もちろん治療費もかかる。乳房炎にかかるコストは、こういった原因から生じる。

 体細胞数が増えれば、乳量が減るだけでなくチーズを作る際に必要な成分が減るなど、乳質が悪化し、繁殖成績にも影響する(スライド4)。臨床型の乳房炎では当然だが、潜在性の乳房炎の場合はどうか。慢性の乳房炎の場合、炎症メディエーターが上昇し、血管の数、二次卵胞の数が減る(スライド5)。すなわち受胎させることが難しくなり、間接的に乳牛の繁殖パフォーマンスの低下につながる(スライド6)。このことをまず、酪農家に伝えていただきたい。

上皮細胞の健全性が失われると抗菌作用も減り、乳房炎が増える


スライド7:上皮細胞の役割

 乳房炎の発症機序には、免疫、環境、細菌の3つの要素が深く関与している。これらのバランスが取れていないと明らかに問題が生じる。環境で細菌が増殖し、かつ乳牛の免疫機能が低下した場合、感染により乳房炎を起こす。これは古典的な乳房炎のモデルだが、実際はこれだけに限らない。実際には上皮細胞が関係しているという最新のモデルがある。上皮細胞は乳の産生という機能に加え抗菌の役割も併せ持ち、免疫と炎症に関与している。上皮細胞の健全性が失われると乳量が減るだけだと思われがちだが、抗菌作用も減り、乳房炎が増加する。

 ドイツの同僚から提供された画像を紹介する(スライド7)。過去には乳房炎の防御機能には白血球細胞のみ関係があると考えられていたが、上皮細胞でも抗菌性ペプチドが産生されていることが分かっている。ただし、乳房炎になってしまうと、潜在性であろうが臨床型であろうが、上皮細胞が乳ではなく免疫系の因子をより多く産生するようになる。その結果、乳量が減る。遺伝的にスイッチが切り替わる仕組みになっているからである。

 上皮細胞は乳房を感染から防御する非常に重要な役割を担っている。例えば乳房内に注入する軟膏剤もあるが、この薬剤が上皮細胞を攻撃し、生体の防御機能に損傷を与えてしまうこともある。

乾乳期の治療は重要。泌乳期は費用対効果を踏まえて検討すべき


スライド8:乳頭と感染
スライド9:乾乳期治療はYESかNOか?
スライド10:治療の延長:費用対効果

 乳房炎はほぼ例外なく、乳頭からの細菌感染によって引き起こされる。乳腺上皮細胞における局所の防御作用はもちろん、乳頭口の健全性を保つことが感染の防御に重要。乳頭口が開口している時間が長いとより感染のリスクが上昇する。

 スライド8の研究によると、細菌が外部に存在する場合、100万CFUでも感染率は50%以下だが、乳頭管を通じて乳房の中に侵入すると、100CFUという菌数でも90%が感染する。つまり感染を減らすためには、しっかり乳頭口を防御する必要がある。

 次に治療時期についてであるが、イタリアでは約90%の乳牛に対して、乾乳期の治療を行っている。抗菌薬を使いすぎだという声もあるが、実際のところ、乾乳期の治療は抗菌薬の耐性につながっていないという報告がある。未治療の乳牛と比較した場合、乾乳期の治療が感染コントロールにおいて大変効果的だというデータも存在する(スライド9)。新規感染を予防する上でもとても重要である。

 泌乳期の治療については、まず治療の目的は何か、つまり酪農家が何を求めているかを理解することが大事。最終的に酪農家のコスト削減になるのかを確認する必要がある。治療したとしても、感染牛がすべて回復するとは限らない。回復したとしても金銭的にプラスになるかどうかも分からない。

 実際の事例を例に挙げてみると、乳房内の治療を3回行った場合、治癒率59%で費用対効果がゼロを超えるが、8回行った場合、ゼロを超えず、損失しか生まないことになる。(スライド10)酪農家の損失を最小限に抑えるために、事前に費用対効果について説明が必要であろう。

イタリアでの臨床試験で、バイトリルは非常に高い治癒効果を示した


スライド11:投与後7日と14日での細菌学的、臨床的治癒率
スライド12:投与後7日と14日での臨床的スコア評価
スライド13:投与後7日と14日での体細胞数の推移

 最後に治療指針について述べたい。乳頭表皮が角化をしている場合には、治療をしても傷口が回復していないため、再感染する可能性がある。やはり早期に診断し、早い段階で原因を特定する必要がある。大腸菌群による乳房炎は急性であり、重症度が高い。24時間以上、36時間以上と時間の経過とともに治療の成功率は低下していく。抗菌薬を使用するには、全身投与が効果的である。新規発症を予防するためには、どの個体、どの牛群が感染しているのかを確認することも重要である。

 バイトリル注射液の大腸菌性乳房炎に対するイタリアでの臨床試験について紹介する。スライド11~13は、投与後7日と14日での細菌学的、臨床的治癒率、臨床的スコア改善率、そして体細胞数を調査したものであるが、臨床的治癒率において約70%という高い値が得られた。臨床的治癒率で14日目に再発する場合には、先述通り乳頭の表皮が治癒していないことが原因の可能性が高い。

 黄色ブドウ球菌による乳房炎は治癒が非常に難しい。慢性の場合は治癒不可能と考えた方がいい。しかし感染2週間以内の乳房炎では治癒する可能性が高い。また、感染した分房数が多い場合では、より治療が難しくなる。また産次数が治療の効果に影響を及ぼす。牛自体に遺伝的な価値がある場合、積極的な治療も考慮すべきであろう。それ以外はやはり費用対効果を考え慎重に評価するべきである。獣医師が最も良いと考えるアドバイスを行い、酪農家が判断をくだす必要がある。

 獣医師の目的は、農家の収入を増やすことであって、治癒率という数字を上げることではない。治療は経済的な合理性をもって、賢明に行う必要がある。また、経済的にも環境的にも、業界全体にその持続可能性が求められている。すべての知識を使ってプロセスを管理し、酪農家にとって役立つ解決策を出すことが、業界の成長に結びつく。一般的・古典的なやり方も役には立つが、やはり皆様の知識、専門性、そして頭を使って、さらに優れた治療を提供されることが大事だと言える。

まとめ

  • 乳房炎は酪農現場において経済的損失の最も大きい疾病のひとつであり、全体の生産工程に悪影響を及ぼす。
  • 上皮細胞の健全性が失われると産乳量が減るだけでなく、抗菌作用も減り、乳房炎が増加する。
  • 乾乳期の抗菌薬治療は治癒率が高く、耐性菌のリスクが低く予防効果もあるため、常に行われるべきである。
  • 治療で感染牛が回復するとは限らず、回復が酪農家にとって経営的な利益を意味するわけではないため、泌乳期の治療は慎重に検討するべきである。
  • イタリアでの臨床試験においても、バイトリルは大腸菌性乳房炎に対し非常に高い治療効果を示している。
  • 臨床家の目的は農家の収入を増やすことであって、治癒率を上げることだけではない。
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