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バイエル薬品 大動物シンポジウム 2015
佐藤 知広 先生

臨床現場における呼吸器疾患『治療』の実際-第2次選択薬と生産性について-

西諸県農業共済組合 佐藤 知広 先生

BRDC治療中の体温、呼吸症状と食欲、活力は、ほぼリンクする


スライド1:材料と方法
スライド2:治療中の体温
スライド3:治療中の体温
スライド4:呼吸器症状スコア
スライド5:呼吸器症状スコア
スライド6:生活スコア
スライド7:生活スコア

臨床獣医師は牛呼吸器病からは逃れられない。また、抗菌薬の使用に関しては、私はNOSAIの診療所に所属している獣医師なので、家畜共済診療指針に基づき治療を行う必要がある。また、獣医師としてはMICやMPC、薬物動態も考慮しエビデンスに則った薬剤選択、治療をしたい。この状況を踏まえ、第2次選択薬を有効に使うにはどうすべきか。薬剤特性と利便性のバランスをどうとるべきか、管内N町86頭の子牛での試験を例に考えてみたい(スライド1)。

 まずは呼吸器病治療中の牛の体温について。バイトリルワンショット注射液(以下、BOS)とバイトリル5%注射液に関しては、投与2日後に効果がみられた場合は体温低下が明らかだった。BOS 投与群で3日目に体温、症状がぶり返す症例がみられたが、この時、薬自体は体内からすでに消失しており、持続性の製剤ではないことに起因すると思われた。セフチオフル製剤は、サンプル数が少なかったからかもしれないが第3次選択薬を必要とする症例がなかった。フロルフェニコール製剤に関しては、効果が乏しかった症例においても再度発熱はみられなかったが、その後のキレが悪い症例が多かった(スライド2、3)。

 次に呼吸症状スコアについて。こちらも体温の動きと同様、3日目あたりで明らかに効果がみえない症例があった。フロルフェニコール製剤は、熱は下がっていたが、特に呼吸雑音や発咳が残っている感触を多く受けた(スライド4、5)。

 最後に生活スコア(食欲・活力)について。食欲の回復は顕著に病態を反映している。呼吸器症状が治まっても食欲が出ないことが多く、実際に食べだしたり走り回りだしたりするのは、遅れるようである。しかしその動きとしては、体温や呼吸器症状とほぼリンクしている(スライド6、7)。

初発で使用するKMやOTCやTMSは臨床でのエビデンスに乏しい


スライド8:鼻腔スワブによる起因薬検索
スライド9:分離菌株の薬剤感受性
スライド10:分離菌株の薬剤感受性
スライド11:治療例のMIC事後判定

鼻腔スワブに関しては、呼吸器疾患を群で見た場合、その中で何が一番優位な菌なのかを検索する意味で十分意義がある。全55頭の中で、M.bovisは少なかったが、病原性が不明であるM.bovirhinisが多く分離された。P.multocidaM.haemolyticaは、陽性率は高いが抗菌薬が良く効いている(スライド8)。

 各分離菌株の薬剤感受性を見ると、M.bovisに関してERFX(エンロフロキサシン)の感受性は良好であった。KM(カナマイシン)やOTC(オキシテトラサイクリン)は若干感受性が低下していた。M.bovirhinisは中途半端な感受性を持つものが非常に多い。
P.multocidaM.haemolyticaなどの細菌に対しては、β-ラクタム系(APBC:アンピシリン、CTF:セフチオフル)も検査したが、ERFX同様に感受性は良好であった。初発での使用が推奨されているKMやOTCやTMS(チルミコシン)はMICが高く感受性は低かった(スライド9、10)。

 治療例のMIC事後判定では、BOS、バイトリル注射液、フロルフェニコール製剤、セフチオフル製剤を第2次選択薬として投与し、治癒した症例のMICは、概ね感受性が良好であった。第3次選択薬まで使用した症例はフロルフェニコール製剤で多かったが、やはり環境や栄養状態の方が免疫状態を大きく左右していると感じた(スライド11)。

疾患の発生件数が増え長引くほど、農場全体の生産ロスは増大する


スライド12:罹患日数とDaily Gain(1日増体量)
スライド13:罹患日数、出荷日齢、体重と充足率(%)の関連
スライド14:出荷日齢、体重と罹患日数の関連
スライド15:管内子牛市場の出荷体重と呼吸器病発生件数

呼吸器病も下痢も生産性に大きく影響する。宮崎県の場合、和牛に関しては子牛の生産基地としての役割が大きく、全国へ向けた一大マーケットの位置付けにある。8~10カ月の間で各市場に出ていくが、同じ農場の同居牛でも、病態によって体格が歴然と違うケースもあり、市場での評価にも大きな差が出る。

 前述の試験症例のうち、セリの出荷までデータを追えた事例を紹介する。まずは発症から終診までの罹患日数と1日増体量(Daily gain: DG)について。バイトリル注射液投与群の罹患日数が若干増えてしまっているが、第3次選択まで進んだ症例が10頭中7頭いたためで、バイトリル自体の効果は高かった。やはり罹患日数が増えたものほどDGが低く、最終的な発育が遅れてくる(スライド12)。

 また、(日本飼養標準に対する)体重充足率の低いものほど成長が遅れ、セリへの出荷が遅くなることにつながっており、もともと小さい牛ほど罹患日数が延長していた。100%を境にして見ると、大きな牛は風邪を引いてもダメージの小さいことが判明した。やはり罹患時の栄養状態や、それまでの飼養環境により、疾病によるロスも大きく変わってくる(スライド13)。

 罹患日数に対する出荷時の日齢と体重を見ると、長く罹れば罹るほど出荷を遅らせる必要があり、体重もロスが大きくなってくる。本来であれば350kgまで増える牛だったかもしれない。去勢牛や雌牛も含めた市場全体の平均値(287日齢、体重295kg、44万円:2012年4月〜2013年10月)との比較ではあるが、体重に関しては6.6kgマイナス。価格も2~3万円低下するという結果だった(スライド14)。
 管内の呼吸器病発生件数と子牛セリ出荷体重の推移を見ると、出荷体重が下がっているのが呼吸器病の件数の多い月と合致している。逆に体重が乗っている時期は診療が少ない時期と重なる。すなわち呼吸器病の発生件数が多い時期は、健康な牛も含めて発育が停滞気味になると考えられ、地域全体で非常に大きな生産ロスとなる(スライド15)。

第2次選択薬を有効に使うためには、臨床上のテクニックも必要


 第2次選択でしか使用できない抗菌薬をいかに有効に使っていくかが重要である。私の場合、重症度によっては初日にまず消炎剤を打ち、2日目から切り替えることもある。慢性化させてしまうと確実にロスが出るため、農家のためにも早めに切り替え、最適な抗菌薬を選択するテクニックも必要になってくると思う。例えばBOSも、連日投与のバイトリル5%注射液や10%注射液とTPOに合わせて使い分けをすれば、より適用例が拡がる。効果としてはほぼ同等なので、私の場合、毎日通っている農場へ出張等で行けなくなる際に、BOSを打って明日、明後日は大丈夫だと説明をすると、代理の担当獣医師を調整するよりも非常に喜ばれる。

 呼吸器病が1頭いれば農場全体の生産性が下がり、全体とすれば農場なり地域なりの生産性を落とすことに繋がってしまう。呼吸器病1頭を診るときには、その水面下に5頭、10頭の予備軍がいることを念頭に置く必要がある。ワクチネーションなどの予防策も色々あるが、臨床家にしてみれば、もっとも基本的な早期発見・早期治療、そしてすぐに完治させることが生産獣医療に繋がると言える。

まとめ

  • 罹患時の充足率が低いほど重症化し、生産ロスが大きい。
  • 罹患日数が延びるほど生産ロスが増大し、元気な牛も平均を下げ、群(農場)全体の生産性も低下する。
  • 有効な第2次選択薬を早期に適用することは生産ロスを防ぐためにも大切。慢性化させないためには、臨床での見極めが重要。
  • 「生産獣医療」に向けて、「早期発見・早期治療」は非常に重要なファクターである。
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