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バイエル薬品 大動物シンポジウム 2015
大動物シンポジウム 2015

牛コクシジウム症とその免疫メカニズム

宮崎大学 農学部 獣医学科 獣医寄生虫病学研究室 教授 堀井 洋一郎 先生

2012年の本講演(大動物シンポジウム2012講演4『子牛におけるコクシジウム感染症の現状と今後期待される対策』)でも述べたとおり、牛コクシジウム症に初感染した子牛のオーシストを調べると、OPG値に単峰性のピークを示し、次の感染に対する免疫(再感染抵抗性)が関与していることがわかった。これにより、感染レベルを低くコントロールできるような適切な予防プログラムの標準化が検討できるのではないかと説いた。今回の講演では、以前に紹介していない研究事例を中心に、牛コクシジウム症の免疫メカニズムを掘り下げて紹介したい。

実験動物でのコクシジウム感染に対するトルトラリズルの効果


スライド1:大量感染後の再感染抵抗性
スライド2:小量感染後の再感染抵抗性

 2008年に国内での販売が開始されたTZ(トルトラズリル)製剤の牛用バイコックス®は、サルファ剤と違い、細胞内寄生ステージ全般に効果を発揮する。牛での推奨用量15mg/kgに準じマウスで実験したところ、コクシジウムのシゾゴニーやガメトゴニーにも作用した。効果的に使用すれば、投与時の駆虫効果に加え、再感染に対する抵抗性獲得につながるのではないかと考え、小腸下部寄生のコクシジウムであるEimeria vermiformis感染モデルのマウスを用いて検討。プレパテントピリオドが6~7日であるため、8~11日間の糞便を採取し、全てのオーシストの数を1頭あたりのオーシスト排泄数と便宜上みなして実験を行った。

 まずは大量感染後にTZを投与し、その後に再感染を行ったところ、全ての時期の予防的投与で再感染抵抗性を獲得できた(スライド1)。続いて小量感染後に確認したところ、感染後2日と3日のTZ投与において、再感染抵抗性獲得に差が見られた。6日目の投与では確実な抵抗性ができるが、これはコクシジウムが組織内でシゾゴニーによって感染数を増やしていくことに関連がある。つまり、2日目あたりからシゾントからメロントが出て次の感染が起こり抵抗性を発揮するが、6日まで経つと2回以上繰り返しているため、十分な抵抗性ができると考えられる(スライド2)。

 大量感染の場合は、TZの投与時期にかかわらず再感染抵抗性を獲得するが、小量感染の場合は、投与時期によって再感染抵抗性が獲得できないケースもある。すなわち、牛の自然感染では感染量が分からず、TZの投与時期によっては、仮に薬の効果があったとしても再感染抵抗性を獲得できない可能性も十分にある。

ヨーロッパにおける牛のコクシジウム感染症に関わる研究紹介


スライド3:フィンランドの調査
スライド4:デンマークの調査
スライド5:E. bovis オーシストの野外における生存率

100頭の乳牛子牛(15~60日齢)を対象にしたフィンランドの調査では、E. bovisE. zuerniiのみが子牛の下痢に関与し、血便は見られなかった(スライド3)。また、52群453頭の乳牛子牛(3週~6カ月齢)を対象にしたデンマークの調査では、96.2%の群、60.9%の子牛が陽性を示した(スライド4)。E. zeurniiE. bovisは88.5%の群、41.5%の個体で陽性。E. zuerniiE. bovisE. cylindricaの3種が下痢症状に関与し、血便は非常に少なく0.67%だった。これらの研究からも、日本においてコクシジム症がこれほど牛で大きな問題になっているのは、和牛の遺伝子が関与しているのではないか、和牛と乳牛では発病の仕方が違うのではないかと思われる。

 一方、E. bovis オーシストの野外における生存率を調査したヨーロッパの報告もある。正常なオーシストは外界では7~10カ月で数%にまで生存率が下がるが、10カ月経っても生存しているものも確認できた。土の温度がマイナス8℃を示しているような過酷な状況にもかかわらず、生存が確認されたのは、コクシジウムの根絶が困難であることを示唆している(スライド5)。

コクシジウム感染症の免疫に関する研究紹介


スライド6:ICRマウスにおける再感染の抵抗性 Ono et al. Parasitol Res 2016, 115: 211-15.
スライド7:SCIDマウスにおける再感染の抵抗性 Ono et al. Parasitol Res 2016, 115: 211-15.
スライド8:Nudeマウスにおける再感染の抵抗性 Ono et al. Parasitol Res 2016, 115: 211-15.

病原体の宿主内での長期的な存続は、再感染に対して強い抵抗性を維持するのに役立つ。これをConcomitant immunity = 随伴免疫といい、結核やリーシュマニア症のような感染性疾患の顕著な特徴である。特に免疫をもつ個体において、潜伏性を確立する病原体の能力は、病気の再発に対してしばしば重大な影響をもつ。例えば癌の場合、転移巣がある場合に原発巣を切除すると随伴免疫がなくなり、転移巣が増殖することがある。
これがコクシジウムにもあるのではと考えていたところ、鹿児島大学・松尾智英先生のグループが素晴らしい研究を発表した。ICR、Nude、SCID、それぞれのマウスにEimeria krijgsmanniを感染させ、再感染の抵抗性を見て、組織の中にどういうステージが見つかるかを見ていった。

 ICRマウスにおいては、4回のシゾゴニーを経て7~11日にオーシストを排出した。2代シゾントは8週まで観察されるが、再感染させると3代シゾントから先は観察されなかった(スライド6)。SCIDマウスでの再感染では、全てのステージが観察された(スライド7)。Nudeマウスの再感染ではSCIDと同様だったが、長期の観察により再度オーシストが出現した(スライド8)。
つまりは一旦休止していたものが、免疫が弱ければ再度、出てきている可能性がある。同じことが牛でも起きているのではないか。通常、親牛になると抵抗性が現れ、オーシストを出すことは殆どないが、周産期になると増えてくる。それが子牛への感染源になっている可能性が十分ある。

天然の物質(ガーリック)による抵抗性の調査


スライド9:天然物質を使用した抵抗性の調査(感染3日後と6日後の比較) Khalil et al. Parasitol Res 2015, 114: 2735-42.
スライド10:上皮細胞に増えたCD8+ T細胞数 Khalil et al. Parasitol Res 2015, 114: 2735-42.

近年、天然の物質による抵抗性に関する論文が増えてきた。我々のチームでもガーリックを使って調査をしたところ、半分程度だがオーシスト数を抑えることが出来た。ではそのメカニズムは何なのか。記憶免疫のない初感染のデータで比較をした。 感染3日後と6日後で試験区のIL-10は非常に低い。IL-10は炎症性サイトカインに対抗し、細胞傷害性をある程度補正する役割を持っているサイトカインである(スライド9)。

 次に、コクシジウムが感染する上皮細胞に増えたCD8+ T細胞を数えてみたところ、初感染3日目で大きな差が出た。ガーリックを投与することによって自然抵抗性に代表されるような細胞障害性のT細胞が上皮内に出ていて、初期の感染防御に関わっていると考えられる。分裂があまり進んでいない時点で抑えると、半分くらいのオーシスト排出に留めることが出来る(スライド10)。
 インターフェロンγは非常に大事だとずっと言われていたが有意差はない。むしろCD8+ T細胞が活性化され、それがサイトトキシックに働いているのではないかということが伺える結果が出た。

牛の出血性腸炎の病態解析


スライド11:調査方法
スライド12:コクシジウムの検出結果
スライド13:細菌検査結果
スライド14:Eimeria感染とC.perfringens

子牛生産農場でのTZ製剤によるコクシジウムコントロールは結果として非常に有効である。しかし肥育農場においては、現在もたびたび出血性腸炎が発生する。なぜならTZ製剤は、3カ月齢以下の子牛に1回だけ投与するよう推奨されている。そのため子牛の時にはうまくコントロールできても、肥育農場においては治療が長期化したり、集団発生や突然死が起きたりしている。血中でClostridiumが見つかることもある。

 ニワトリの場合、コクシジウム感染が粘膜免疫機構に影響を与え、C. perfringens にとって増殖をしやすい環境を作りだしている。牛においても病原性細菌の定着・増殖に関与しているのではないか。山形県農業共済組合連合会の加藤敏英先生らと共同で、出血性腸炎を発症している牛を対象に糞便検査を行った(スライド11)。

 結果、出血性腸炎を発症している牛では、初診時において、E. zuerniiが優占して著しく増殖し、α毒素を持つC. perfringensが増加していた(スライド12、13)。Clostridiumのエンテロトキシンが病態形成に関与し、Eimeria感染とClostridiumの増殖の間に関連性があるのではないかと考えられる(スライド14)。
 また、大腸菌群数が有意に増加し、腸内細菌叢の構成バランスが明らかに崩れている。腸管の蠕動運動が妨げられているのかまでは分からないが、E. zuerniiと病原性細菌の複合感染が出血性腸炎の病態形成において重要な部分を占めているということは言えるのではないか。肥育牛におけるコクシジウム症は現在も頻発している。コクシジウムと他の病原性微生物との相互作用および病態形成との関係の解明に向けたアプローチが必要ではないかと考えている。

まとめ

  • コクシジウム感染に対するTZの効果について、大量感染の場合、投与時期にかかわらず再感染抵抗性を獲得するが、小量感染の場合、投与時期によっては再感染抵抗性を獲得できない可能性がある。
  • ヨーロッパにおける牛のコクシジウム感染症の調査結果から、和牛と乳牛では発病の仕方が違うのではないかと推察できる。
  • 周産期になって増えてきたオーシストが、子牛への感染源になっている可能性は十分にあると思われる。
  • ガーリックを使って天然の物質による抵抗性の調査をしたところ、感染初期の時点では、オーシストの排出を半分程度に留めることが出来る。
  • 出血性腸炎の病態形成においては、E. zuerniiと病原性細菌の複合感染が重要な部分を占めていると考えられる。
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