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Bayer International Bayer Cattle Symposium 2018
International Bayer Cattle Symposium 2018

若齢牛における重要な疾病の一つである牛コクシジウム病を管理・防除すべき理由とその方法

Prof. Heidi L. Enemark, Norwegian Veterinary Institute, Oslo, Norway

牛コクシジウム病は世界中で見られる疾患である。アイメリア種は広く存在することから、すべての子牛がいずれかの時点で感染の危機に曝される。主にE. züerniiE. bovisE. alabamensisによって引き起こされ、最もよく見られる症状は下痢だが、臨床症状のないまま続くことも多い。罹患すると、増体量の減少や未経産牛の受胎の遅れ、死亡率の上昇などを招き、動物福祉や生産性に大きな影響を与え、経済的損失につながってしまう。とりわけ不顕性のコクシジウム感染は牛群全体に広がることから、経済的影響が大きくなる。

コクシジウム病はトルトラズリルで処置が可能である。コクシジウム病の予防的治療は、重篤な下痢の症状が出る前のプレパテントピリオド期間中に行うものだが、感染があった時点をどう特定するかは農場間でも異なり、なかなか難しい。しかし生産者に対し、オーシストの排泄が増える3週間前、もしくは下痢が始まる3週間前に何があったかを訊くと、なぜ起こったかの原因が特定できると思う。すると次の牛群における下痢の発生時期も予測され、予防的治療が可能になると考えられる。

E. züerniiE. bovisの場合、多くは集団のペンに移動した際に感染し、2週間ほど経つとその牛群において下痢が見られ始め、直後にオーシストの排泄が増える。E. alabamensisの場合、OPGが10万を超えなければ症状にあらわれないことに留意しなければならない。下痢は曝露から1週間以内に見られ、下痢とオーシスト排泄のタイミングが若干ずれている。つまり下痢が見られる個体からのみ検体をとった場合、オーシストの排泄はないと考えてしまうかもれない。そのため検体は入牧して10日の時点でとり、治療は入牧して2~3日後に始めなければならない。なお、トルトラズリルによるE. alabamensisの予防的治療は、臨床症状の発生を抑え、体重を増やす効果のあることが示されている。

コクシジウム病の既往歴があるデンマークの農場で、試験開始段階で臨床症状のなかった牛群を対象に、バイコックス(トルトラズリル製剤)の長期的な効果試験を行った。投薬は集団のペンに移った1週間後に行い、8週間モニタリングしたところ、2週間後から投薬群と未投薬群の増体量に有意差がついた。5カ月後に再び測定したところ、群間の有意差はさらに大きなものとなっていた。投薬後も対象となった個体を追跡しているが、投薬を受けた牛に肺炎や乳房炎の症例が少なかった。また別の研究では、バイコックスを使うことで最初の授精を早め、全般的な受胎率を高められるという結果も出ている。

アイメリア属種は増殖能力が高いことから、感染した子牛は数百万ものオーシストを排泄して飛散させ、生活環境をひどく汚染してしまう。オーシストは環境に対する抵抗性が強く、数日以内に胞子形成し、長期間にわたり特に湿潤環境で感染力を維持する。また、オーシストは多数の一般的な消毒剤に対する耐性がある。プレパテントピリオドはE. bovisE. züerniiが2~3週間、E. alabamensisは約1週間。1頭の子牛が感染すると、牛舎全体を汚染する恐れがある。

コクシジウム病は良好な衛生状態と子牛管理によって予防が可能である。分娩後の数時間以内に高品質の初乳を授乳させ、乾燥したきれいな環境に移動させること。出生時期や免疫レベルが違う牛を一緒にしないこと。床から高い位置に飼料や水を置き、糞便から遠ざけること。若年齢の子牛が前年に放牧された場所への入牧は避けること。適切な時期に処置をすること。感染した牛は隔離して治療することなどが重要となる。的確な診断および最適な投薬タイミングの見極めが薬物耐性の発現を防ぎ、将来にわたり薬物の有効性を保護する重要なポイントである。

Bayer International Bayer Cattle Symposium 2018
International Bayer Cattle Symposium 2018

抗菌薬と耐性菌予防-現場で正しく理解し行動する重要性-

Prof. Joseph M. Blondeau, University of Saskatchewan, Canada

BRD(牛呼吸器病)は離乳直後の育成牛、肉用や乳用の子牛で多くみられる感染症で、北米での罹患率は65~80%、うち斃死率は45~75%と報告されている。また同地域では、BRDが肉牛にとって最も大きな経済的損失となっていて、生後3週間から離乳までの主要な死亡原因になっている。1頭あたり45~92ドルのコストがかかるとされ、日増体量、枝肉重量、品質へも影響を与える。乳牛においても大きな問題で、難産、廃用の多さに加え乳生産量の低下という長期的な影響も考えられる。非常に重要な疾患であり、経済的な損失も非常に大きい。例えばオクラホマの肉牛業界は46億ドル規模の市場だが、BRDの経済的な損失は、その約2割となる8~9億ドルにも上ると言われている。

BRDのコントロールに抗菌薬は必須である。新しい抗菌薬の開発が進んでいない現在において、今あるものの有効性を将来にわたり維持していくことは重要であり、慎重な使用が求められる。抗菌薬耐性菌は現在に至るまで増加し続けており、依然として全世界的な懸念である。WHOも数年前の声明で、最も有効な戦略は初診時から抗菌薬を正しく使用することで病原細菌を確実に殺菌し、耐性獲得前に排除することだと述べている。つまり耐性菌に対応すること自体を不要にすることが重要となる。すべての抗菌薬が同じ特徴を持つというわけではない。効力を発揮するスピード、殺菌能力には統計学的な有意差がある。より効力の高いものを使用するほうが、耐性変異株の選抜を阻止する意味でも大変有効だとわかっている。

臨床現場において有効な抗菌薬を選択する上でいわゆるPK/PDを考慮することが重要である。フルオロキノロン系の抗菌薬の場合、投与後の最大血清中薬物濃度(Cmax)とMICの比率が8~12を超えること、もしくは濃度曲線下面積(AUC)とMICの比率が125を超えることが臨床的な回復を期待できるPK/PD値といえる。また、耐性変異株阻止濃度を考慮すると、AUCとMPCの比率がおおよそ22を上回ることが耐性菌選抜リスクを低減するためのPK/PD値といえるだろう。

エンロフロキサシン、フロルフェニコール、チルミコシンおよびツラスロマイシンによるM. haemolyticaの臨床分離株に対する殺菌能力を検討した2015年の報告では、100万~10億 CFU/mlの濃度の細菌数に対し、各薬物を最大血清中薬物濃度もしくは最大組織中薬物濃度にて暴露した結果、エンロフロキサシン存在下での殺菌量が他剤よりも優れており、殺菌が始まるまでの時間も早かった。また、すべての薬物について薬物曝露時間が長いほど殺菌量が多くなり、薬物濃度がMPCを超えるとM. haemolytica株の殺菌がさらに迅速化することを実証した。

このようにPK/PD特性および臨床成果を踏まえても、エンロフロキサシンは、主要なBRD病原細菌に対して低いMIC値とMPC値を実証している。また、他の薬物と比べ、臨床的に達成可能な薬物濃度での迅速な殺菌活性と統計学的に有意な発育阻止濃度を示し、臨床的に有効であることがわかっている。
さまざまな抗菌薬において、主要なBRD病原細菌を殺菌する速度とその程度には統計学的に有意な差がある。効能を最大限に高め、耐性菌選択を最小限に抑えるための適切な抗菌薬の選択は、抗菌薬の寿命保持にもつながっていく。抗菌薬と耐性菌予防は依然、感染症治療における重要な検討事項であり、適正な抗菌薬を選択することが重要である。

Bayer International Bayer Cattle Symposium 2018
International Bayer Cattle Symposium 2018

新生子牛の栄養における新たな概念-初乳から常乳に至るまで-

Prof. Michael A. Steele, University of Alberta, Canada

子牛にとって腸管の健康維持が非常に重要である。死亡率の10%、罹患率の50%は下痢によるもので、初乳からの受動免疫移行の失敗により24%の子牛がはじめの1ヶ月のうちに下痢を発症すると報告されている。また離乳前の抗菌薬の使用は生涯の乳生産量にも影響するといわれている。

受動免疫の獲得をよりよくするための初乳給与の方法は何だろうか。哺乳瓶の場合は初乳が直接第四胃へ行くが、チューブの場合はルーメンを経て第四胃へ、そして下部消化管へ行く。我々の試験では、3Lに150gのIgGが入った初乳を用いチューブ給与と哺乳瓶給与で比較した結果、受動免疫の移行および第四胃から腸へと初乳が排出される割合に差は認められなかった。また、インスリンおよび腸由来ホルモン(グルカゴン様ペプチド1と2)にも差がなかった。

では、初乳の処理方法の違いではどうか。低温殺菌(60℃,60分間)した初乳を給与された子牛は、熱処理しなかった初乳を給与された子牛に比べ、生後12時間での小腸内のビフィズス菌保有率が高く、大腸菌保有率が低かった。熱処理によって、プレバイオティクスであるオリゴ糖が初乳中で利用されやすい形になったと考えられる。下痢のリスクを減らすのに初乳の低温殺菌は効果的だと言えよう。

さらに、初乳を給与するタイミングについてはどうか。生後6時間と12時間との間にはあまり違いがなかったが、出生直後と比較すると大きく違い、IgGの受動移行だけでなく腸内細菌のコロニー形成にも影響を及ぼし得ることを、最近の研究で実証した。できるだけ早期の初乳給与が子牛の感染リスクを下げることになる。

オリゴ糖とIgGに加え、初乳はさまざまな生物活性因子を含有する。ある最近の研究では、成長タンパク質や分化タンパク質など50種類のタンパク質が初乳だけに認められ、タンパク質分解活性に対して阻害効果を及ぼす能力のある因子やタンパク質を補っていることを実証した。常乳と初乳中の生物活性因子の比較は複数の研究で実証されているが、生物活性因子濃度が初乳から常乳にかけてどのように変化するかはまだはっきりとしていない。一方、消化管機能に影響を及ぼし得るインスリン、IGF-1、成長ホルモンといった生物活性因子の含有率は、5回目の搾乳後でも常乳より高いことも実証されている。

ほとんどの酪農家が重視しているのは、初乳給与におけるIgGの吸収量であり、それ以降の給与では、組成が大きく変わる常乳または代用乳へと移行することになる。しかし我々の研究所では最近、初乳が腸の表面積拡大に影響を及ぼすことを実証した。初乳給与後にすぐに常乳へと直接移行した子牛は、生後3日間にわたり初乳、または初乳:常乳が50:50のミルクを給与された子牛に比べ、総体的な消化管質量と小腸絨毛発達が少なかった。なかでも消化管における絨毛、十二指腸、空腸などは、50:50のミルクを給与した子牛が最も健全に育っていた。初乳と搾乳2回目のミルクにおいては、オリゴ糖の濃度が高いことも明らかとなっている。

生後1週間という期間は、より多くの栄養を吸収できる個体へと変化できる可能性がある。上述の結果を受けて我々は、生後数日間にわたり移行乳を給与すること、または代用乳に最大50%の初乳を補うことを推奨している。子牛が生涯にわたり健康を保てるよう、移行乳中の生物活性因子について今後もさらに分析を進めていく。

Bayer International Bayer Cattle Symposium 2018
International Bayer Cattle Symposium 2018

乳牛移行期における代謝管理

Prof. Thomas R. Overton, Cornell University, Ithaca, USA

乳牛の移行期は依然として乳生産サイクルの最重要部分である。最適ではない移行期の乳牛飼養管理の結果、最も経済的な損失として影響の大きなものは何なのか。乳牛における高ケトン血症に関連する損失費用に関する研究から、高ケトン血症、第四胃変位および子宮炎の損失費用はそれぞれ、症例1件当たり平均117ドル、707ドルおよび396ドルと算出されている。高ケトン血症による種々の損失の内、乳生産量と繁殖能力の減少の損失費用は、全費用の60%を占めた。さらに、第四胃変位症例の88%と子宮炎症例の70%は高ケトン血症と関連するといわれ、その結果、高ケトン血症の1件当たりの総損失費用は289ドルに増加した。
このような損失を防ぐため、乳牛移行期管理をどうすべきか。このステージでの管理を最適化するために、以下の取り組みを提言する。

まずは、カルシウムのレベルをモニターし、低カルシウム血症を防止すること。低カルシウム血症に起こる可能性がある乳牛に関してはサプリメントを使うことがベネフィットになるというデータが出ている。
次に、エネルギーとタンパク質の代謝への適応性を促進すること。エネルギーバランスが崩れNEFAやBHBAの濃度が上がることで、乳生産量や繁殖能力が阻害され、代謝障害と免疫関連障害のリスクが増大する。負のエネルギーバランスに対する不適応の主なリスク因子の例として、乾乳期における高いボディコンディションスコア、エネルギー消費の過多または過少などが挙げられる。

最近実施された複数の研究が、高ケトン血症の乳牛を群レベルで治療することの便益を実証した。
ニューヨークとウィスコンシン、4カ所の酪農場で行われた試験を紹介する。携帯型メーターにより3~14日間で6回、血中BHBA濃度を測定し、潜在性ケトーシスの乳牛(BHBAが1.2~1.9mM)を対照群またはプロピレングリコール投与群に割り当て、その効果を評価した。結果、プロピレングリコールで処置された潜在性ケトーシスの乳牛は対照群と比べ、潜在性ケトーシスからの回復の可能性が高く、最初の30日間の泌乳中に乳生産量が約0.70kg増え、初回授精で受胎する可能性が高く、第四胃変位を発症する可能性または泌乳開始後30日以内に除籍される可能性が低かった。

さらなる取り組みは、免疫機能の補助および慢性炎症の防止に努めること。移行期の乳牛は免疫機能が低下し、感染リスクが高くなる。最近の研究では、移行期の乳牛における急性炎症と慢性炎症を区別して検討すべきであるという提案がある。正常な炎症反応を起こす能力のある乳牛は代謝適応と生産および繁殖に成功する可能性が高い一方、炎症反応の解消が遅い乳牛はその後の疾患に関連する負の影響を受け、乳生産量が減る、または繁殖能力が低下する可能性が高いということである。炎症反応は重要だが、すぐに解消してもらいたい。
もちろん分娩管理のストレスがネガティブな影響を与えることも避けなければならない。例として分娩前後における飼養密度の管理、初産と経産牛の分離、分娩前後における過剰なグループ変化の回避、そして乾乳期中に始まる暑熱ストレスの悪影響の軽減が挙げられる。
最後のポイントだが、牛群それから個体レベルのモニタリングのシステムが重要だ。特に、分娩後の乳牛の定期的、例えば毎週または隔週のモニタリングは、携帯型メーターを使用すれば群レベルで廉価かつ便利に行える。こうしたモニタリングは、移行期乳牛における代謝の健康に関する優れたバロメーターの役割を果たし、管理の影響評価や改善の機会となるだろう。

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