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バイエル薬品 大動物シンポジウム 2019
大動物シンポジウム 2019

抗菌剤の臨床効果予測と選び方

バイエル薬品株式会社 FAビジネス統括部 学術 岩田 隆

耐性菌対策は世界的な急務である。動物の医療においても、獣医師はただ「効かせる」のではなく、「耐性菌を生み出さない」ことも考えて治療を進めることが求められるようになっている。抗菌剤を使わなくてはならない場面においては、その臨床効果をある程度予測することが重要である。ここでは、各種データから臨床効果を予測する手法と選び方について話したい。

感受性ディスクの判定を抗菌剤の選択基準とする場合には注意が必要。


スライド1:VKBディスク栄研エンロフロキサシンの添付文書参考情報

抗菌剤を選択する基準として、経験や治療歴、感受性ディスクの判定結果などを基に考える先生が多いのではないだろうか。感受性ディスクは薬剤選択に有効な手段と思われるかもしれないが、注意も必要である。人医療では、CLSI(アメリカ臨床検査標準委員会)の基準に則った感受性ディスクが幅広く使われている(スライド1)。基本的には、細菌のMIC(最小発育阻止濃度)実測値とアメリカで承認されている薬剤を用法用量通り投与された場合の血中薬物濃度、臨床結果を総合的に判断して、S(Sensitive:感受性)、I(Intermediate:中間)、R(Resistant:耐性)が決められている。しかし、ある薬剤が日米両国で承認されているとしても、米国と日本で用法用量が異なった場合、その判定基準は同一視できない。また、牛由来の菌に対し人用の感受性ディスクを用いて、人用の判定基準で評価するということもあるようだが、用法・用量、体内の薬物動態が異なる動物でこの判定基準を適用するのは間違いである。さらに、例えば牛肺炎起因菌に対し、動物種や対象組織が異なる判定基準を用いる場合も、正確な判定ができない。

ほかにも、判定基準がどのように決められたのか明確ではないディスクも見受けられる。メーカー独自の判定基準を設けているかもしれないので、注意が必要だ。そのため同じ判定基準以外は、並列で感受性を比較すべきではない。

FQ剤の特長を最大限に生かすには、大量投与とデータの活用が重要。


スライド2:時間依存性抗菌薬の効果的な使用法
スライド3:濃度依存性抗菌薬の効果的な使用法
スライド4:各種薬理学指標と、治療成功と耐性菌の発現抑制に関連するPK/PDパラメータ

治療効果のある抗菌剤とは、どういうものか。まず、標的の細菌に抗菌力があること。in vitroで抗菌活性が十分あることが条件。次に、細菌の存在する感染部位まで抗菌剤が十分に分布することである。加えて、薬物の特性を生かした投与法を行うことも重要である(スライド2・3)。例えば、フルオロキノロン(FQ)剤は、殺菌的抗菌薬で濃度依存性なので、1回の投与量を増やし、承認されている用量の最大量を投与した方がより組織中濃度が上がり、効果が期待できる。

もう一つ、FQ剤の特長を最大限に生かすために大事なことは、データの活用である。近年、PK/PD(薬物動態/薬物力学)の理論が確立されてきた。AUC(血中濃度-時間曲線下面積)、Cmax(最高血中濃度)、MIC、この3つの指標を使った薬理学的な計算により、臨床効果を予測できる。濃度依存性の場合、血中AUC/MICの数値がグラム陰性菌で125以上、もしくは血中Cmax/MICが8~12を超えてくると臨床効果が十分高いと予測できる。数値は大きければ大きいほど効果が高い。(スライド4)

例えば気管支鏡を使い、牛気管支肺胞領域の粘膜表面の被覆液を洗い取って、薬物がどれだけ分布しているかを測る気管支肺胞洗浄法(BAL)で見ると、エンロフロキサシン(ERFX)注射液製剤であるバイトリル5%注射液を5mg/kgで皮下注射した場合、肺胞上皮被覆液(ELF)中のERFX濃度は9.67µg/mlというCmaxが出た。各種肺炎起因菌に対するMIC値は加藤ら(日獣会誌, 2013)を参照した。血中濃度ではないため、あくまでも参考であるが、ELF中ERFX濃度でPK/PDの計算してみると、Cmax/MICがP.multocida で38.68、M.bovis で12.40。どちらも12を超え、血中濃度を指標にした数値で評価すると、治療効果が得られる数値を越えている。AUC/MICの数値もすべて125を超えた。

単回注射液製剤であるバイトリルワンショット7.5㎎/㎏で皮下注射した場合のBALのデータを見ると、ELF中Cmaxが24.48。Cmax/MICは、P.multocida で97.92、M.bovis で31.38と、どちらも8~12を大きく超えており、血中濃度を基準としたPK/PDの評価を用いると治療効果が得られる数値をはるかに上回っている。AUC/MICも全て125を大幅に超えていた。

同様に、泌乳牛に対しバイトリル10%注射液を5 mg/kgで静脈注射した場合の乳汁中ERFX(CPFX)濃度を調べたところ、2日間の平均のCmaxが4.31µg/g、AUCが22.09μg・hr/gであった。国内の乳房炎から分離された原因菌、E.coliおよびK.pneumoniaeに対するERFXの感受性の調査では、MIC90はともに0.125µg/mL。すなわち、Cmax/MICが34.48でAUC/MICが176.72。これも血中濃度を基準としたPK/PDの評価を用いると治療効果のある数値を大きく越えている。

薬理学的な計算により、耐性菌選抜の抑制はある程度、予測できる。


スライド5:PK/PD:中程度耐性菌の選抜抑制の目安
スライド6:バイトリル5%注射液(5mg / kg):ERFX + CPFX 血漿、ELFおよびBALF細胞の濃度
スライド7:バイトリル 5mg/kg×2日間 静脈内投与後の乳汁中薬物濃度

もう一つ、耐性菌選抜の低減に関しても、AUCとMPC(耐性突然変異株増殖抑制濃度)を使えばある程度、予測できる(スライド5)。北欧での研究で、大腸菌に関してAUC/MPCの値が22以上あった場合には、耐性菌が選抜されなかったと報告されている。Blondeauら(2005)の報告では牛のP.multocidaに対するERFXのMPC90は0.125㎍/mLと数値が出ているのでこれを利用し、Kuramaeら(WBC2018にて口頭発表、スライド6)によるELF中のAUC(107.1 μg・hr/g)を引用すると、AUC/MPC はP.multocida で857とAUC/MPC≧22の基準に則れば、耐性菌の選抜は非常に低いであろうと予測される。同じくKuramaeらのバイトリルワンショットのAUC314.5から算出すると、AUC/MPC はP.multocida で2,516、と22をはるかに超え、こちらも耐性菌の選抜が低いと予測できる。

ちなみに乳汁中のERFX(CPFX)の数値もあり(スライド7)、AUCが22.09。乳房炎由来ではないが、大腸菌に対するMPC90は0.5という数値があるので計算すると、AUC/MPC は44.18と22を大きく超えていた。これらの数値の大きいものを選んだ方が耐性菌は出にくく、治療効果も高いと予測される。

今後は、治療の確率をより高めることや耐性菌選抜の確率を下げることを考慮し、製薬会社や研究者の報告しているデータを入手し、PK/PDの計算をした上で薬剤を選択することを考慮していただきたい。

まとめ

  • 感受性ディスクの判定を抗菌剤の選択基準とする場合には注意が必要。同じ判定基準以外は、並列で感受性を比較すべきではない。
  • FQ剤の特長を最大限に生かすには、大量投与とデータの活用が重要である。
  • PK/PDのデータを活用することで、治療効果や耐性菌選抜低減が予測できる。
  • 薬理学的な計算により、ERFX製剤は呼吸器病や乳房炎に対し、高い治療効果が得られることが予測できる。
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